執筆者:ライアン・ゴールドスティン ⁄ 大平 恵美
アメリカにおける特許訴訟は、戦略的決断を必要とし、その決断には重大な利害を伴う。
特許訴訟には、共通した二つの問題がある。ひとつは、事実として、被告が特許を侵害しているか、もう一つは特許自体が有効か無効かという点である。本稿では、企業の戦略に影響をすると思われる無効と侵害に関する、二つの重要な動向について検討したい。
アメリカで特許訴訟などにかかわったことのある企業は、複雑な技術的に関することも陪審員が審理することに驚かされることがある。陪審員の中には、技術的な知識を備えている人がいないこともあるだろうし、また高校を卒業していない人がいる場合もある。こうした陪審員にどのように複雑な技術や法律の基準を説明するかというのは、弁護士にとって難しいことだ。
こうした中、近年注目されているのが、陪審説示(Jury Instructions)において、裁判官がどのように特許無効の概念を陪審員に説明するべきかという問題である。
陪審説示は、証拠調べと弁論を終えたあと、事件を判断する前に、裁判官が陪審員に法律について説明することである。陪審員は、説明を受けた法律を、トライアルで聞いた事実や証拠に適用するように求められる。裁判官の存在は、陪審員の意見に大きく影響する可能性があるので、裁判官によって行われる陪審説示は判決を左右する重大な要素なのだ。
だからこそ、原告側も被告側も、陪審説示の内容がそれぞれの立場に有利に働くように努める必要がある。陪審説示の内容は、当事者間で合意に至らないことが多く、当事者が、それぞれの立場について主張したあとに、裁判官によって決定されるというのが大半である。
また、「侵害行為者と主張される者」、つまり被告側が特許は無効であるという抗弁に打ち勝つためには、「発行された特許は有効である」と長い間推定されていたことを、「明白かつ説得力」のある証拠を提出することによって覆さなければならない。言い換えれば、この「推定」は、「特許は有効である」という認識から裁判を始めなくてはならないという法的な障害を意味する。「明白かつ説得力のある」証拠によってのみ、特許を無効にすることができるのだ。
伝統的に裁判所は、同推定と加重された証明基準について陪審説示をしているが、さまざまな理由から多くがこのアプローチを批判してきた。ある意見では、同推定及び加重された証明基準を両方とも陪審に説示することは、無効と判断するであろう陪審を混乱させる可能性があると主張している。もう一つの意見として、特許審査手続の実務の現状からすれば、同推定(特許商標庁の知見に対する敬意に基づくものであるが)それ自体が排除されるべきであると主張している。さらに、米国法に照らして法的に誤っているという理由から、「明白かつ説得力のある」証拠の基準を攻撃する者もいる。
特許無効に関する陪審説示に対する伝統的アプローチ
米国の裁判所は、特許の有効性についての推定を拡大してきた。1952年、同推定は合衆国法典第35編第282条の特許法において成文化され、「特許は有効と推定される。」と規定されるに至った。そもそも、この推定は、裁判所の特許商標庁の知見に対する敬意を表している。つまり、特許商標庁は、裁判所よりも、出願特許を適切に審査し査定を行うための優れた経験、技術的知見及び時間を有しているという理由で、裁判所は適切に発行された特許を有効と推定しているのである。
一般に推定は、どの当事者が証拠提出責任を負うかということを定める手続的手法として扱われるが、特許の有効性についての推定は、実質的な効果もある。同推定は、「侵害行為者と主張される者」つまり被告側にまず特許無効を立証する手続上の義務を負わせ、さらに、「明白かつ説得力のある証拠」によって無効であると証明することを要求する。
その結果、有効性の推定と「明白かつ説得力のある証拠」の基準を、分けて扱う陪審説示が一般的となっている。
伝統的アプローチに対するいくつかの変更提案
このほど、National Patent Jury Instructions Project(連邦巡回区控訴裁判所の主席裁判官Paul Michelが組織する団体)は、有効性の推定について触れずに、特許無効に関する明白かつ説得力のある証拠の基準について述べた「モデル特許陪審説示」を提案した。
委員会による注記によると、「有効性の推定の手続的役割に照らし、(明白かつ説得力のある証拠の基準)を陪審に説示するのに加え、陪審に有効性の推定を説示することは、無効を判断するという陪審の役割について混乱を生じさせる可能性がある。そのため、本説示では、有効性の推定についていかなる言及も排除している。」と説明している(Nat’l Patent Jury Instructions Project, Model Patent Jury Instructions § 5.1, comm. note (Draft, Dec. 5, 2008))。このようなアプローチは、現在、北カリフォルニアのモデル陪審説示や全米法律家協会のモデル陪審説示に採用されている(Model Patent Jury Instructions for the Northern District of California § B.4.1、ABA Litigation Section, Model Jury Instructions: Patent Litigation § 9 (2005))。
一方で、最近では同推定を完全に排除すべきだと提案する批評家がいる。
このような批評家は、同推定は、特許商標庁が連邦裁判所よりも出願特許の審査にかける時間や経験及び情報を持っているということを前提としているが、こうした前提は事実に反すると主張しているのだ。
特許商標庁はむしろ、年間数十万件の出願特許に忙殺され、ほとんどの出願について、発明分野の専門家を雇用するための予算を欠いているとし、その結果、申請されている特許を専門としているわけでもなく、広く浅い経歴しかない上に、審査にほとんど時間をかけないといった審査官に出願申請が託される可能性がある。
審査官は、これまで先行技術や参照を満足に検討するだけの十分な時間や知見を有していないと批判を受けてきた。特許の有効性の推定は、特許商標庁とその知見に対する敬意に由来するものであるものの、批評家はこれは正当性を欠くものとし、同推定は排除されるべきであると提言している。
明白かつ説得力のある証拠の基準に対する挑戦
有効性の推定に挑戦することに加え、特許無効についての加重された「明白かつ説得力のある証拠」の基準には法的な根拠がないと主張する批評家もいる。
1982年に連邦巡回区控訴裁判所が設立される前は、特許無効を立証するために必要な証明基準について一致した意見はなかった。
これとは対照的に、連邦巡回区控訴裁判所は、「明白かつ説得力のある証拠」の基準を一様に特許無効の抗弁に適用してきた。この問題に関する初期の判断の1つであるConnell v. Sears, Roebuck & Co., 722 F.2d 1542 (Fed. Cir. 1983)において、連邦巡回区控訴裁判所は、第7巡回区連邦控訴裁判所によって用いられた基準に類似した無効基準を適用した地方裁判所の意見を審査した。連邦巡回区控訴裁判所は原判決を維持したが、特許商標庁が検討していない技術が提出されている場合は証明基準を減じるという地方裁判所の判示に反論し、そのような技術の提出は、「明白かつ説得力のある証拠の基準を変化させない。」と判示した(同判決1549頁)。26年が経った現在も、同判示は、いまだに定例的に適用されている。
連邦巡回区控訴裁判所の見解は、最高裁判所の二つの古い判例、Morgan v. Daniels, 153 U.S. 120 (1894)及びRadio Corp. of America v. Radio Engineering Laboratories, 293 U.S. 1 (1934)と軌を一にしている。これらの判例において、最高裁判所は、特許無効の主張に対し、証拠の優越よりも加重された高い基準を適用している。また、後者の判例の意見では、誤りであるという説得力のある証拠によって推定が覆されるまでは、特許は有効と推定されると広範に述べている(Radio Corp.事件7頁。
ただし、「推定の理論的根拠-特許商標庁が、特許請求の範囲を認めたということ-は、大きく減じている。」と指摘した(KSR Int’l Co. v. Teleflex Inc., 127 S.Ct. 1727, 1745 (2007)参照)。
しかし、連邦巡回区控訴裁判所が、Sears事件とその後の裁判例において「明白かつ説得力のある証拠」の基準を採用したことは、最新の最高裁判所の法理に逆行しているという意見もある。
最高裁判所は、連邦議会が証明基準を規定していない場合、民事訴訟に適用される証明基準は、証拠の優越の基準であると判示しているとする(Grogan v. Garner, 498 U.S. 279, 286 (1991)、Herman & MacLean v. Huddleston, 459 U.S. 375, 387 (1983)参照)と言うものである。
たとえば、最高裁判所は、Herman & MacLean事件において、原告は、「明白かつ説得力のある証拠」によって証券取引所法10(b)の詐欺の主張を立証しなければならないという第5連邦巡回控訴裁判所の判決を破棄した。最高裁判所は、民事訴訟の両当事者にとって誤審の危険性は公平であることを根拠に、既定の「証拠の優越」の基準は、当事者の利益がおおよそ調整される適切な証明基準であると判示した(Herman & MacLean事件388-90頁)。
実務的提言
特許の有効性の推定及び特許無効を証明するための明白かつ説得力のある基準についてのこれらの批判は、特許法の根本的な改正に結び付いてはいない。しかし、特許争訟に関わる弁護士は、これらの問題を知っていなければならない。また、これらの問題を自身の扱う事件において、活用することができるかもしれない。
たとえば、特許争訟の両当事者は、陪審説示に特別の注意を払う必要がある。侵害行為者と主張される者は、陪審員が混乱する可能性があることを理由に、有効性の推定と「明白かつ説得力のある証拠」の基準について別々の陪審説示を行わないよう、裁判所を説得するように努めるべきである。
特許審査官の負担を理由とする主張は、成功する見込みはほぼない。もし、この要求が認められなければ、侵害行為者と主張される者は、上訴審で同じ問題を提起するために、適切かつ十分な裏付けがある異議申立てを行うべきである。
一方で特許権者、原告側は、有効性の推定と加重された証拠基準は、特許無効の問題を判断するうえで陪審員が検討すべき特許法の基本であること主張し、両方の説示を行うことを強く要求すべきである。特許権者は、両方の説示が行われたうえで是認される傾向にあり、もし地方裁判所がこの手法を採れば、その判断が破棄される可能性が低いことを指摘することもできる。
侵害行為者と主張される者は、最高裁判所に至るまでのすべての過程において、「明白かつ説得力のある証拠」の基準を争おうとするかもしれない。この問題に関する連邦巡回区控訴裁判所の長年の経過を考えれば、事実審及び上訴審において、これが成功する見込みは乏しいが、連邦巡回区控訴裁判所の管轄に従わない特許争訟も存在する。
たとえば、特許侵害が反訴として主張されたが、訴状においては特許法違反の行為が何ら主張されていない場合、連邦巡回区控訴裁判所は上訴管轄権を欠く(Holmes Group, Inc. v. Vornado Air Circulation Sys., Inc., 535 U.S. 826 (2002))。そのような事案は比較的稀ではあるが、連邦巡回区控訴裁判所の先例ではなく、地方の巡回区控訴裁判所の法が適用されるので、「明白かつ説得力のある証拠」の基準の排除のための最良の展望を与える。
もし、侵害行為者と主張される者が、地方の巡回区控訴裁判所の1つを、特許無効のための加重された証明基準の適用が誤りであると説得できたならば、連邦巡回区控訴裁判所の判断との矛盾が生じ、最高裁判所にこの問題を取り上げることへの関心を生じさせるであろう(たとえば、「時折生じる判断の矛盾は当裁判所の注意を振り向ける問題を特定するのに有益である。」と指摘した同判決839頁のStevens裁判官の 一部同意意見参照)。
再言しておくが、上訴審で同じ問題を提起するためには、侵害行為者と主張される者は、サマリージャッジメント・ペーパー及び訴訟を通して、加重された証明基準の適用に異議を唱えておかなければならない。
侵害の分野で最もよく問題となるのは、侵害が「故意」であったかどうかである。この問題の多くは、以下のように定義される。(1)被告が原告の特許に気づいていたか、(2)被告の活動は、有効な特許を侵害している可能性が客観的に高かったにもかかわらず、なされたものか、(3)侵害の可能性の客観的な高さは、被告に知られていたか、または、被告が知り得べきほどに明らかであったか。
もし、侵害が故意によるものと判断されれば、損害賠償額は3倍に増額され得るし、弁護士費用の賠償も認められ得る。
故意の侵害に対する防御について、「被告側は特許を侵害してないという内容の弁護士の意見書(Opinion Letters)を被告側が取得していたという議論が頻繁に俎上に上る。
1983年、連邦巡回区控訴裁判所は、侵害行為者と主張される者に、問題となる特許についての通知を受け取ったら、積極的に注意を払うよう義務付けた(Underwater Devices, Inc. v Morrison-Knudsen Co., 717 F. 2d)。Underwater Devices事件以来、特許争訟事例において、弁護士からの意見書の取得は、故意の侵害を主張される被告がとる最初の対策の一つであった。しかし、ここ3年、意見書の目的とその使用は、劇的に変わった。
意見書を取得し、また、使用するかどうかは、重要な戦略的決定である。意見書は、侵害行為者と主張される者が故意の侵害の主張に対する防御として開示するまでは、依頼者と弁護士間の秘匿特権により守られている。
しかし、意見書の開示は、弁護士と依頼者間の秘匿特権と当該意見書を作成した弁護士職業活動成果の秘匿権の放棄を意味する。
意見書を開示すれば、同じ主題についての依頼者と弁護士との間のやりとりを含む全ての書類の開示のほか、弁護士からの証言録取、また、企業とその弁護士との間のやりとりの開示を許すことになるのだ。この秘匿特権の放棄の範囲は、事案によって異なる。いくつかの事実審裁判所では、秘匿特権の放棄が「同じ主題」に関する全てのやりとりに適用されることを理由として、この秘匿特権の放棄を意見書を作成した弁護士のみならず、訴訟代理人弁護士にまで拡張する。侵害行為者と主張される者は、故意の主張に対する防御というメリットと、依頼者と弁護士間の秘匿特権の放棄、場合によっては、訴訟代理人弁護士にまで拡張される秘匿特権の放棄のリスクとを比べて、板挟みの状態となっていた。
こうした侵害行為者と主張される者のジレンマは、2007年に連邦巡回区控訴裁判所がUnderwater Devices事件の判示を覆したことにより、多少解消されることとなった。
2007年、連邦巡回区控訴裁判所は、積極的注意義務の基準を否定し、故意の侵害を証明するには、特許権者、原告側が侵害行為者と主張される者、被告側の「客観的な無謀さ」(Objective Recklessness)を示さなければならないと判示した(In re Seagate Technology, LLC, 497 F. 3d (Fed. Cir. 2004))。
このことは、侵害行為者と主張される者が弁護士からの助言を受けなかった場合でも以前のように不利な推認を受けることはなくなるということである(Knorr-Bremse Systeme fűr Nutzfahrzeuge GmbH v. Dana Corp., 383 F.3d 1337 (Fed. Cir. 2004)、In re Seagate Tech., LLC, 497 F.3d 1360 (Fed. Cir. 2007)参照)。Seagate事件の裁判所はまた、裁判所により異なっていた意見書の開示による依頼者と弁護士間の秘匿特権の放棄の範囲の問題についても論じている。同裁判所は、意見書を作成する弁護士と訴訟代理人弁護士とは役割が異なっているものと理解し、公平性の観点から依頼者と弁護士間の秘匿特権の放棄は、訴訟代理人弁護士にまでは及ばないものと判示した。Seagate事件においては、意見書を作成する弁護士と訴訟代理人弁護士は、別の弁護士であった。
Seagate事件以降、意見書の目的とその使用は、さらに異なったものとなった。2008年には、Broadcom Corp. v. Qualcomm Inc., 543 F.3d 683 (Fed. Cir. 2008)により、今度は、誘発侵害の主張に対する防御として、意見書は再び一般的に用いられるようになった。Broadcom事件においては、連邦巡回区控訴裁判所は、特許権者の側では、意見書がないことを理由に特定の意図の存在を推認させることが許されない一方で、侵害行為者と主張される者の側では、意見書によりその意図の存在を否定することが許されるのは不公平であるとの理由で、意見書を取得していないことは、特定の意図と関係のある事情であると判示した(同判決699頁)。テキサス州東部地区連邦地方裁判所の最近の事例は、この問題に新しい展開を加えている。同裁判所は、意見書を作成した弁護士が訴訟代理人のチームに加わっている場合には、意見書に頼ることによる秘匿特権の放棄は、意見書の主題に広範囲にわたって及ぶものと判断している。
Tyco Healthcare Group LP v. E-Z-EM, Inc., 2010 WL 2079920, No. 2:07-CV-262 (E.D. Tex. May 24, 2010)においては、被告のE-Z-EM, Inc.とACIST Medical systems, Inc.は、特許侵害の主張を受け取って、速やかに外部の弁護士に意見書を求めた。故意の侵害に対する防御として意見書に頼るべく、被告らは、意見書の作成及び意見書に関連するやりとりを提出した。ほぼ同時に、被告らは、意見書を作成した法律事務所を訴訟代理人として雇い、意見書を作成し署名した弁護士は訴訟チームに加わった。
潜在的な特許訴訟の被告に対する警告として、連邦地方裁判所は、「E-Z-EMは、意見書に含まれるのと同じ主題についての全てのやりとりにつき、依頼者と弁護士間の秘匿特権を放棄した。」と判示した(同判決*3)。その理由付けは、In re Seagate Technology, LLC, 497 F. 3d (Fed. Cir. 2004)の連邦巡回区控訴裁判所の決定における、意見書を作成する弁護士と訴訟代理人の役割論に遡ったものである。「意見書を作成する弁護士は、情報に基づくビジネス上の判断をするための客観的な評価を提供するものであるのに対し、訴訟代理人弁護士は、訴訟戦略に集中し、司法の判断者に対して事件を提示する最も上手い方法を練るものである。」(同決定1373頁)。意見書を作成した弁護士の一員が訴訟チームに積極的に参加することを許すことは、「『これらの法的助言の間に根本的な違い』があるのだろうかとの深刻な疑問を抱かせる。」(Tyco事件判決*3)。そして、裁判所は、原告は、「企業の擁護者としての立場と訴訟戦略が(意見書の作者に)与える影響の程度を発見する」権利があると判示した(同)。
Tycoにより要求された意見書は、詳細にわたっていた。秘匿特権の放棄が「意見書に含まれるのと同じ主題に関するあらゆるやりとり」に及ぶと判示する中で、裁判所は、意見書を作成した弁護士と訴訟代理人弁護士が同じ法律事務所に所属する場合、被告が拠って立つ意見書と同様の主題に関するやりとりであれば、依頼人と訴訟代理人との間のやりとりには保護が及ばないと判示した。
そのため、意見書が広範に及ぶものであったことから、連邦地方裁判所は、秘匿特権の放棄は「(意見書の作者と依頼者、意見書の作者と訴訟チーム、訴訟チームと依頼者との間の)やりとりに言及する全ての弁護士職業活動成果及と同じ主題について依頼者と交換した全ての弁護士職業活動成果に及ぶ」と判断した(Tyco事件判決*3)。
この3年間の教訓は明らかである。故意の侵害の主張に対しては、侵害行為者と主張される者の心理状態は、もはや問題ではない。しかし、それでも、意見書により、侵害行為者と主張される者の活動は「客観的に無謀」ではなかったとの防御方法を援護することは出来る。意見書はまた、誘発侵害のクレームに対する防御ともなり得る。さらに、依頼者と弁護士間の秘匿特権の放棄が拡大することを避けるために、意見書を作成する弁護士と訴訟代理人弁護士は、同じであってはならない。意見書を作成した弁護士を訴訟準備に参加させることは、相手方当事者が侵害行為者と主張される者の訴訟戦略を徹底的に探ることを許し、訴訟代理人弁護士を秘匿特権の広範な放棄の危険に晒すことになる。
米国の特許紛争は陪審により審理されるため、法が変われば、二重に影響がある。法律問題が影響を受けるというだけではなく、全く又はほとんど法律を理解していない陪審員に対し、自らの反応と戦略的判断を説明しなくてはならなくなる。侵害行為者と主張される者は、意見書を取得するか、また、取得した意見書を開示するかという重要な問題に必ず直面する。最近の法の変遷を反映して、この3年間で意見書の目的とその使用は劇的に変わった。あらゆる特許紛争は、法的な動向を完全に理解し、裁判官と陪審に対して事件を提示する際に戦略的判断がどれほど影響するかを具体的に考えたうえで、争われなければならない。